2022.7.04
グラフィックデザイナーのお仕事の流れ[前半](相談~受注)
「グラフィックデザイナーとしてお仕事を始めてみたものの、このやり方は合っているんだろうか?」そんなふうに不安を感じているデザイナーは少なくないのかもしれませんね。
そこで今回は、グラフィックデザイナーのお仕事の流れと、各フェーズにおける注意点をご紹介!
これまでのご自身のやり方と照らし合わせながら読み進めてみてください。
グラフィックデザイナーのお仕事の流れって?
まず、グラフィックデザイナーのお仕事というと『デザインをつくること』。どのような手順で進めるのか
流れを簡単にご紹介しておきましょう。
仕事の流れ
1.ヒアリング
2.制作工程の設定
3.見積り作成
4.ご依頼(受注)
――――――――――――(この記事ではここまでをご紹介)
5.制作(実作業)
6.確認(チェック)
7.印刷管理
8.納品
9.請求
ここで「あれ? 意外に制作よりも他の業務のほうが多くない?」と思ったアナタ。そうなんです。デザイナーの仕事は、クライアントの要望に合わせてデザインをつくることといっても、デザインするフェーズは『5.制作(実作業)』のフェーズのみ。それ以外は、ほぼ事務作業といっても差し支えないくらいなんですね。フリーランスから事務作業は切りはなせませんから、当然の内容といえばそうなのかもしれません。
では、それぞれのフェーズにおける具体的な注意点を見てきましょう。
1.ヒアリング:クライアントの言葉を鵜呑みにせずプロのアイデアを!
ヒアリングでは、クライアントの求めていること(要望)を聞きだして、自分のスキルでどう応えられらるのかをすり合わせていきます。クライアントの言葉をそのまま鵜呑みにするのはNG。というのも、クライアント自身、そのプロジェクトにおいて何が必要かを本当に理解しているとは限らないからです。
たとえば、「新規サービスに関するチラシを作りたい」と言われても、それが認知度アップのためなのか、直接的な集客を目的にしているのかによっても訴求する内容や見せ方が変わってきます。目的によっては、チラシよりもWEB広告のほうが最適なケースもあります。しかし、そのあたりの判断材料や情報を持ち合わせていないクライアントは「紙媒体でのチラシが最適」と、その時点では考えているかもしれないのです。
そこを「チラシでも、こういう見せ方がいい」「紙よりもWEBを使ったほうがいい」と提案できるのが、プロの仕事。もしもあなたが紙媒体が得意でWEBに不慣れなグラフィックデザイナーだった場合、対応できる人を探す・つなぐといったことも考慮したうえで、その案件の受注を検討するのが望ましいでしょう。
「この案件を取りこぼすと収入が減る!」と考えて、ついつい目先の利益だけを優先してしまいがちです。そのときは良くても、結果としてクライアントに無駄なコストを払わせてしまったとしたら、プロ失格。デザイナーとしての信用・信頼が失われてしまうことを心に刻みましょう。
クライアントの利益を追求することで一時的に失注したとしても、長い目で見れば「誠実に対応してくれた」と評価してもらえ、それが次の仕事にもつながりやすくなります。
また、このフェーズでは、クライアントが求めていることに対してデザイン案を起こせる程度には、案件の内容を確認しておきましょう。そうすれば、後に続く工程をスムーズに進めていけます。その際、クライアントの予算感の確認も忘れずに!
請求段階になってから予算感を確認してしまえば、無用なお金のトラブルを引き込んでしまいかねません。事前に確認しておくことで、デザイナー自身どこまで対応可能かも判断しやすいですし、クライアント側もコストの算段がつけやすくなります。仮に、予算が合わなかった場合には、作業範囲をすり合わせたり、コストに見合うデザイナーを紹介したりするなどして予算の範囲内での対応方法を検討することも可能になりますよね。
ヒアリングで聞くことリスト
a.何がしたいのか(目的)
b.何のためにしたいのか(目標)
c.それをすることでどんな結果を求めているのか(結果)
d.どう使うのか
e.予算感
f.スケジュール感
自分なりにチェックリストを作っておくのもおすすめですよ。聞き逃しを防止できます。
2.制作工程の設定
サプライズは不要!伝えるのは「事前に」「具体的に」が重要
フェーズ1のヒアリングで確認した内容をもとに制作工程を仮決めします。
このとき、チームアップして制作を進めていくのであれば、チームメンバーのスケジュールを押さえることも必要です。事前に確認せずに一方的にデザイナーがスケジュールを決めてしまえば、対応できないメンバーも出てきます。それでは、スケジュール通りに制作を進めていくのは難しくなりますよね。
また、紙媒体とWEB媒体では、制作の進め方も違います。紙媒体の場合、印刷管理といったWEB媒体にはない工程も入ってきます。それを踏まえたうえで、各スケジュールを決めていかなくてはなりません。
最近では、紙媒体とWEB媒体を連動させるプロジェクトを組まれるクライアントも多いです。この場合では、紙・WEBそれぞれの工程と全体での工程とでスケジュールを設定しましょう。
制作工程の設定は、いわばクライアントと状況を共有するためのもの。「逐一、スケジュールを共有するよりいち早く作業したほうがよいのでは?」「納品が間に合えば共有する必要はないだろう」と考えているようなら、その考えは今すぐ改めましょう。
クライアントは、知らないところで話が進んでしまうことをとても不安に感じます。ご自身が反対の立場なら、どうでしょうか?
知らないうちに制作が進んでいて、いざ提出されたものが想定していたものと違っていたら、それこそ時間とお金の無駄だったと感じませんか?クライアントも同じです。そのせいでデザイナーに対する不信感が募れば、今後の信用にもかかわります。
クライアントには、サプライズは不要!
必ず「次の提案はどのような形で行うか」「それは具体的にいつ上がるのか」を事前に伝えるようにしましょう。とても単純なことですが、この小さな積み重ねがデザイナーの信用・信頼につながるということを、ぜひ覚えておいてくださいね。
3.見積り作成
ネガティブワード使ってない?大事なのは伝え方!
ここまで良い雰囲気で進んできていたのに、いざ見積もりを出した途端「やっぱりなかったことに」なんて言われた経験のあるデザイナーもいるのでは? たいてい、そういった場面では「金額が合わなかったのかも」と考えがち。ですが、本当にそれだけが理由でしょうか?
クライアントの多くは相見積もりを取って、その中から予算内に収まりそうな安い業者を選ぶ傾向にはあります。しかし、必ずしも金額の低いほうに発注するとは限りません。というのも、クライアントにとって重要なのは、コストパフォーマンス。目先の安い業者に走って後々損をするのはどんなクライアントも避けたいと考えるもの。では、原因はどこにあったのでしょうか。
その要因の一つとして挙げられるのは『見積もりの伝え方』。「そんなことで? どんな業者も伝え方なんて同じでしょ」と考えているのなら、自分の伝え方をちょっと振り返って考えてみて。もしかして、ネガティブワードを使っていませんか?あるいは、提供できる価値を伝えきれていないのではありませんか?
相見積もりを出せば、クライアントはどうしても数字に引っ張られて判断しがちです。けれど、単純に数字を提示するだけと違い、「○○を提供できます」という情報は伝え方を工夫することでしか伝えられません。あなたは、クライアントにどんな価値を提供できますか?それが自分で見えていないのなら、まずはそこを見つけましょう。そのうえで、どんな価値を提供できるのかを伝えられるようになれば、多少金額を高く設定したとしても受注できるようになります。
ここでの注意点は、ただ一つ。ネガティブワードは一切禁止!
NGワードを言いかえてみよう!
・高いかもしれませんがそれ以上お安くできません
→今回に限り、これ以上お安くできないくらい勉強させてもらいました!
・まだフリーで始めたばかりで経験は浅いです
→フリーで始めたばかりなのでしっかりと熱意を持って取り組んで参りますね!
・初めての案件です
→こういったご相談は初めてですが、この業界についてしっかりと勉強をしてまいります。
それを今後の自分に課してみてくださいね。
意識するだけでも、使う言葉も変わってきますよ。
それから、見積もりを作成し慣れていない人にお伝えしておきたいのは、必ず見積額は若干の余裕を持たせた数字で出すこと。
これは、実作業に入ってから金額が見合わなくなった場合に、改めての金額交渉をすることを極力避けるためです。クライアントは、事前に提出された見積額からコストを算出するため、後からの金額アップはたいていの場合において受け入れてもらいにくいのです。
4.受注
「迅速」「共有」「相談」が成功のカギ
見積額にも納得してもらえて、いざ発注してもらえることになったら、早急に制作に着手しましょう。チームアップしている場合ならば、発注があった旨をすぐにメンバーに報せ、改めて制作への着手を促します。ここでデザイナーのほうで情報を止めてしまえば、その分だけメンバーの着手が遅れ、その後の工程にも響きかねません。
また、必要に応じてコミュニケーションツールを駆使して、連絡漏れが起こらないよう環境を整えましょう。できるだけメンバー全員が各々どんな状況にあるのかを把握できるようにしておくと、もしもスケジュールに遅れが出ても早急にカバーする体制の取り直しも可能です。
制作中は、進行状況に応じて適宜クライアントに意見を仰ぎます。その一つが、制作工程内での打合せです。進捗に合わせて打合せ日を設けておくことにより、それが制作物の節目にもなります。工程にひとまずの区切りをつけることは、制作過程における中だるみ防止としても働くからです。
また、その打合せを適宜挟むことによって、制作物の方針を微調整することもできます。作成しているうちに方向性にブレが生じても、打合せでクライアントからの反応を得ることで、どこがズレているのかも判断しやすくなります。その結果、次のフェーズで大きな修正が入ることも防ぐことができます。それによって得られるメリットは、工数増加の抑制、校了までの進捗速度を維持、もしくは迅速化です。
これらのことから、制作工程を上手く舵取りするカギは「迅速」「共有」「相談」にあるといっていいでしょう。